2020年8月14日金曜日

Crass 「Where Next Columbus?」(1981) 和訳




Where Next Columbus? / 次のコロンブスはどこに?


もうひとつの望み もうひとつのゲーム
もうひとつの損失 もうひとつの進歩
もうひとつの嘘  もうひとつの真実
もうひとつの疑問 もうひとつの証拠
もうひとつの左  もうひとつの右
もうひとつの平和 もうひとつの戦い
もうひとつの名前 もうひとつの標的
もうひとつの崩壊 もうひとつの名声
もうひとつの誇り もうひとつの恥
もうひとつの愛  もうひとつの痛み
もうひとつの望み もうひとつのゲーム 
もうひとつの損失 もうひとつの進歩
もうひとつの嘘  もうひとつの真実
もうひとつの疑問 もうひとつの証拠
もうひとつの左  もうひとつの右 
もうひとつの平和 もうひとつの戦い

マルクスは混乱する彼のその頭から1つの考えを思いついた
そのとき、付き従わされるのを待つ多くの人々がいた
彼の本は売られ引用文集は買われていく
お前らは彼らについてよく学び そのときにはもう彼らに囚われていた
もうひとつの左  もうひとつの右 
もうひとつの平和 もうひとつの戦い

ムッソリーニはその混乱した自らの頭からひとつの考えを思いついた
そのとき 役割を演じるのを待つ多くの人々がいた
舞台は用意され 衣装を着せられる
そして ひとつの破壊の帝国の誕生
もうひとつの名前 もうひとつの標的
もうひとつの崩壊 もうひとつの名声

ユングは彼のその夢の中の困惑からひとつの考えを思いついた
そのとき 診られることを待つ多くの人々がいた
‘お前はおまえ自身じゃない’と その理論は言う
しかし俺たちは救うことができる 君たちのその強迫観念が代償を支払うのを
もうひとつの望み もうひとつの勇気
もうひとつの損失 もうひとつの進歩

サルトルは混乱する彼の脳内からひとつの考えを思いついた
そのとき 彼の痛みに溺れる多くの人々がいた
孤立された喜びと 実存の選択
もし別の言葉を使うのなら お前は本当に孤独になれるのか?
もうひとつの嘘  もうひとつの真実
もうひとつの疑問 もうひとつの証拠

いくらかの人間の心の中に芽生えたこういった考えは
多くの妄信的な人々によって膨らませられていった
匿名の存在 空虚な精神
お前はその混乱に 支配の不在に恐れを抱くのか?
お前はその身分ゲームに熱中して自分の名前をそこに書きいれる為に腕を上げる
お前は誰に会う? 誰を見ている?
お前の指導者は? お前の群れはどっち?
お前は誰を見ている? お前は誰を見ている? 
お前は誰を見ている? お前は誰を見ている? 
お前は誰を見ている? お前は誰を見ている? 
お前は誰を見ている? お前は誰を見ている? 
お前の指導者は? お前の群れはどっち?
お前の指導者は? お前の群れはどっち?
お前の指導者は? お前の群れはどっち?
お前の指導者は? お前の群れはどっち?

アインシュタインはその混沌とした知識からひとつの考えを思いついた
そのとき 利益のために方針を変えた多くの人々がいた
彼らは‘神は死んだ’と悟った
だから 彼らは爆弾を力の変わりにしようとした
もうひとつの暗号 もうひとつの頭脳
彼らが私たちに死の雨を降らせようとしている

ジーザスはその混乱した彼の魂からひとつの考えを思いついた
そのとき 支配に加わるのを待つ多くの人々がいた
罪は売られて 許しは買われ
十字架はまるでお前への報酬だ
もうひとつの愛  もうひとつの痛み
もうひとつの誇り もうひとつの恥

お前は自らの選択したほうから距離をおいて見ているのか?
誰の回答がお前のベストなんだ?
誰がお前を混乱から救い出してくれるんだ?
誰がお前にその終末と居心地の良い覆いを残していくんだ?
お前を自分の側まで引き寄せながらも
お前を捨て置くのは誰なんだ?
おまえは誰を見ている?





_____________________________________________



ザ・名曲。3rd「Penis Envy」(1981)収録。
全曲女性ボーカルで女性性の権利などを歌ったアルバムのなかでは異色な、歴史的指導者・思想提唱者に盲目的に付き従う大衆について歌った歌詞の内容です。
政治的主張に限らない、その時代々々で担ぎ上げられた主張、思想に自らが取り込まれるのではなく、自分で考えろ、権威など無くあるのは自分だけなんだから( There is no authority, but yourself.)というCrassの主張が最もあてはまるであろう曲の一つだと思います。
取り上げられた6人(マルクス、ムッソリーニ、ユング、サルトル、アインシュタイン、キリスト)についても、これは英国のアナーキー&ピースを掲げたバンドがこの時代で歌ったからこの6人が選ばれたのであり、日本や現在の状況ではまた違う人物が選ばれるのであろうと思います。2000年代のコロンブスは誰でしょうか。

曲に関していえば、Asylumと同様なノイズポエトリーリーディングともいえるWhat The Fuckの次曲であり、10曲あるアルバムのうちの真ん中に位置する曲です。ゴリゴリ鳴るベースにペニ棒さんのマーチングで鍛えたドラムが炸裂する、Crass流ハードコアの傑作です。Crassは音スカスカだよな、とか言ってる人にはこの曲を聞かしてあげましょう。
この曲のライブ音源を聞いたことが無いのですが、やはりやや演奏が難しいのもあってかライブでは演らなかったのでしょうか。  って思ってたら、近年のCrassトリビュートバンドがカバーしてました↓




0 件のコメント:

コメントを投稿